アレウスはナイフを抜かずにいるベリルをいぶかしげに見つめる。右腕を動かす度に眉を寄せ、それでも作業を続けていた。

「治療する直前まで、あのままがいいんだよ。血が吹き出ない」

 ジェイクが説明していると、ディスプレイに点滅する赤い点が表示された。

「それは?」とジェイク。

「ミレアのGPS信号」

「なに!?」

「もしもの時のためにね」

 それにアレウスは眉間の縦じわを深く刻んだ。

「入れ替えたって訳か」

 複雑な瞳でベリルを見つめる。

 ミレアの髪飾りに隠されていた発信器を取り外し、自分のものと交換した。それを今まで黙っていたことに憤りを感じていても、それがあったおかげで辿れると思えば怒る気にはなれない。