「逃げろ」

 ベリルの声に一歩、後ずさる。

「逃げればこいつを殺す」

 その言葉に少女の足が止まった。

「何をしている!」

 声を張り上げたベリルにびくりとし、きびすを返す。

 しかしキリアが少女を逃がすはずもなく、

「残念」

 あっという間に回り込まれ、見下ろす青い瞳に射すくめられて瞬(まばた)きすらも出来ないほどに体は強ばった。

「う──っ!?」

 恐怖を示した少女の瞳に満足し腹部を強く殴る。そうして、意識を無くして倒れ込む小さな体を抱きかかえた。

「ミレア!」

 少女からの反応はなく、キリアがただ冷ややかにベリルを見つめていた。