けれどもベリルは前回と同じく、キリアを見据えたまま動くことはなかった。

「ダンマリか?」

 苛立つ男をじっと見つめる。

 ミレアの言った事が本当ならば、奴の脅威はほとんど無くなったと言っていい。闘って勝てるかどうかは解らないが、とにかく自分の秘密は守られるのだ。

「お前、まさか俺に勝てる気でいるの?」

 馬鹿かとベリルを睨みつける。それでも応えないベリルに舌打ちした。

「じゃあ死ねよ」

「──っ!」

 駆け寄るキリアの動きは予想以上に速い。

 振り下ろされるナイフをギリギリでかわし、ベリルもナイフを手にして向かってくる刃を受け止める。

 金属のぶつかる音が暗闇に響き、刃が火花を散らす。