一緒に後部座席に乗るのかと思いきや、助手席に乗りたいと言い出したミレアに戸惑うアレウスの様子が面白いらしく、ベリルの口角がやや吊り上がる。

 助手席を選んだのは、それなりに私の事を知ろうとしているのか。

「状況がいまひとつ掴めんのだが」

「わたしは追われています」

「みたいだな」

「ミレア様は捕まる訳にはいかないのだ」

 そのあと、二人は慎重に言葉を選んでいるようで、しばらく沈黙していた。

 深刻な状態なのは先ほどの件で大体の理解は出来ている。しかし、どれほどの状況なのかが把握出来ない。

「自分の国から出た事はないのか」

 淡々とした問いかけにミレアは驚いて目を丸くした。

「どうして、そうだと?」

 目を吊り上げるアレウスをバックミラー越しに見やり、

「彼女が外と言った。そういう意味かと思ってね」