ボスの命令など後回しにしたって問題ない。あんなガキの一人くらい、すぐに捕まえられる。最終的に完遂すればいいのだから、急ぐ必要がどこにある。

 キリアは自分の腕に自信があった。現に、あれだけの数の敵がいても見つからずに戻ってくる事が出来た。唯一、気配に気がついたのはあのつぎはぎだけだ。

 俺の期待を裏切らず、のこのこと現れた。あれだけ雑多な気配のなか、息を殺していた俺に気がつくなんて賞賛に値する。

 そしてベリルを見た瞬間、キリアは自分と同じ匂いを感じた。

「こいつは、上手くすればもっと強くなる」──こいつを使えば、さらなる権力が手に入る。つぎはぎだろうと、人間じゃなかろうと、そんなことはどうだっていい。

 そんな俺の計画を水の泡にしてくれた。

「あの女──」

 横からいけしゃあしゃあと、俺に何をしやがった。闘うことも出来ないガキのくせに、俺の邪魔をするつもりか。

 キリアは怒りで口角を吊り上げ、薄暗い宙を見つめた。