「統率者」に遙か昔から脈々と受け継がれてきた「大いなる力」──それが自分に引き継がれたとき、ミレアは困惑し酷く悩んだ。

 それは今も彼女の心を苦しめ、悩ませている。

「この力を使っては……だめ」

 口の中でつぶやき、決意を硬くして流れる景色を睨みつけた。

 この力を使うくらいならば、わたしは自らの命を絶つこともいとわない。

「ベリル──」

 彼ならきっと、わたしの心を理解してくれる、彼になら全てを話せる。全てを話して、どうすればいいのかを一緒に考えてもらおう。

 そう思った瞬間、それを止める自分がいた。

 これ以上、彼を巻き込む訳にはいかない。知れば彼は一生、わたしを護らなければならなくなる。

 自由を手にした彼を、わたしがまた縛り付けるの? 本当にそれでいいの?

「わたし、どうしたら」

 ミレアは感情の狭間に苦しみ、震える手で胸を押さえた。