──ミレアは変わらない赤い荒野を眺めていた。
見慣れなかった風景はいつしか見慣れたものとなり、気がつけば目新しさも失せていた。それでも、開けた窓から吹き込む風と視界いっぱいに広がる大地は、不思議と心を沸き立たせる。
これが、ただの旅行であったなら、どんなに幸せだったろう。わたしは今も狙われ、追われている。
ベリルと出会わなかったら、わたしはもう、ここにはいない。
「どうして──」
どうしてそんなに、この力を求めるのだろう。こんなものに、なんの価値があるというのだろう。
誰もが求めるものなのかもしれないけれど、これは、人を幸福にするものではないはず。だから、祖先たちはずっとこの力を残してきた。