「しかし、相手もずいぶんと迂闊(うかつ)なことをしたもんだ」

 ジェイクの言葉に、ベリルは目を細める。

 あの男は個人的な思惑で動いていたに過ぎず、そこに組織のことを考えている素振りはまるで見られなかった。

 私をどう認めたのかは解らない。

「大したものではないだろうがね」

 口の中でつぶやく。

 たまたま得た情報の信憑性を高めるためと、私を見定めるための行動だろう。

 ──しばらくして、メールの着信がポップアップで伝えられ、添付されているファイルを開く。

 いくつかあるファイルの中で、知りたい情報だと思われるものをクリックする。

「あん? アトラック・メナス? おいおい。こいつは厄介な組織だぜ」

 後ろで見ていたジェイクが神妙な面持ちで低く唸った。

 アトラック・メナス──十年ほど前に名前が挙がってきた犯罪組織で、CIAなど各国の諜報機関が血眼で調査を続けているものの、未だその全容すら掴めていない、かなり謎の多い組織だ。