「ベリル」

「ん?」

「ミレア様は、一度しか使えない力をお前に使ったんだ。それだけは理解してくれ」

 その瞳は護る者への敬意の念と、自らの誇りを有していた。

 決して、嘘偽りなどないのだと──

「そうか」

 科学も過去には魔術や宗教だった事を思えば、いつか彼らの言っていることも現実として理解できる時代が来るのかもしれない。

 それに、ベリルは彼らの話を嘘だとは思っていない。

 ただ、説明がつかない現在において、思考の着地点を見いだせず、「まあいいか」と漠然としている事がどうにも意識の居心地の悪さを生み出している。

 それでも、「まあいいか」と思える事は嫌いではない。それでやり過ごしてきた過去もある。

 今ではその言葉は、半ば心中での口癖のようにもなっている。柔軟であることは、私生活だけでなく戦闘においても重要だと、硬くならないように努めていた。