「消去しました」

《よくやりました……。では次に、あなたの知るベリルの全てを口外することは出来ません。口を開くことも文字に残すことも、あなたは全ての行動を自らで阻止するでしょう》

「はい……。そう、します」

 答えて数秒、視点も定まらず放心していたキリアはふと我に返る。

「俺は、なにしてた?」

 もしや寝ていたのかと目をこする。

 それでも頭はぼんやりとして思考がまとまらず、寝落ちするほど疲れてはいないはずだとディスプレイを覗く。

「ええっ!? データが消えてる!? なんでえ?」

 そんな馬鹿なことがある訳がない、何が起こったんだとまばたきを繰り返した。

 焦りでキーを打つ手が早くなる。しかし、どんなに調べてもベリルのデータが検出される事はなかった。