──キリアは本部には戻らず、オーストラリアにある組織の基地に身を預けていた。

 ベリルと対峙し、手に入れた情報が本物だと確信したキリアは他の情報も引き出そうとデータ室で一人、パソコンをいじっていた。

 組織のデータは全て端末でつながっているため、本部でなくとも情報は引き出せる。

「あいつと一緒で、つぎはぎのデータばかりだな」

 そのとき、

《キリア……》

 頭の中に女の声が響いた途端、キリアの体がビクリと強ばり、目はうつろに何も映さなくなった。

《キリア、ベリルの情報を全て消去しなさい》

「は……い」

 ゆっくりと手が動き、データの消去を始めた。カタカタとキーボードを打つ指はおぼつかないながらも、確実に抹消していく。