「待ってください!」

 何事もなくキャンプに戻ろうとしたベリルの背中を制止する。

 咄嗟に呼び止めてしまったものの、振り向いたベリルの瞳に喉を詰まらせた。無表情ながらも、その目には鋭さが宿っている。

「先ほどのお話ですが、聞かせてもらえますか」

 聞かれたくない事なのは重々、承知している。彼を傷つける事になるであろうということも──それでも、少女は知りたかった。

「聞いてどうする」

 やや強い口調で聞き返す。

「わかりません……」

「脅しにでも使うか」

「そんなこと──!」

 牽制したベリルに声を荒げる。

 いつも何かに怯え、おどおどとして後ろに下がってしまうような少女が、体を強ばらせながらも退くことはなかった。