──そのとき、地面のこすれる音に振り返る。そこで、ようやく人がいた事に気がついた。

「ミレア」

 岩陰にでも隠れていたのか、よくも気がつかなかったと自分のふがいなさに眉を寄せる。

「ベリル……。あなたは──!?」

 ふと目を覚まし、見かけたベリルの背中を追った先に現れたキリアという男が怖くて岩陰に身を隠したミレアは、聞こえた会話に自分の耳を疑った。

 会話の内容の半分は理解できなかったけれど、ベリルが普通の人間でないことだけは、はっきりと解った。

「聞いていたのか」

 奴はミレアの気配に気付いていたのだろうか。正体を知られた事よりも、それが気になる自分に呆れる。