「ホントに勘がいいねぇ」

 森の中から現れた影は人なつこい笑みを浮かべているが、隠しきれない殺気にベリルは険しい表情でやや身構えた。

「俺はキリア。以後、お見知りおきを」

「どういうつもりだ」

 丁寧に腰から曲げて挨拶をする男に怪訝な表情を浮かべる。

 しかし、キリアと名乗った男が顔を上げたその瞬間、見えた笑みにゾクリと背筋に冷たいものが走った。

 それでも、視線を外さないベリルにキリアは嬉しくなる。

「やっぱり勿体ないねぇ、そのセンス。どうして殺しをしない?」

「なんの事だ」

「とぼけちゃって」

 まるで、友達と冗談話でもしているようにおどけて笑う。

 その瞳に、黒い何かを残したままに──