──朝、傭兵たちは移動準備に追われていた。

「ジェイク」

「おう」

「十人リストアップした」

 ベリルは、軽く手を上げたジェイクに同じく手を上げ返し、一枚の紙切れを手渡す。
「交代要員か。しかしよ、ベリル」

 ジェイクはリストを一瞥(いちべつ)し、仲間たちと挨拶を交わしているミレアを遠目で見やる。

「そこまでしてあの()を護る意味って、あるのか?」

 それにベリルはミレアを見つめる。総勢二十名以上の報酬を、ベリルは最終的に支払う事になる。

 ジェイク以外は一人一万オーストラリアドルだとしても、それ以外の経費もバカにならない。(作中でのレート:一オーストラリアドル=九五円)

 ベリルは彼女からの報酬など、はなから見込んではいない。嘘も方便、行き詰まった彼らの便宜上の手段であることは初めから解っている。

 解ってはいても──