冬のシンとした空気。
尚と歩けるなら、寒さなんて気にしません。
尚に手を掴まれ、手は彼のポケットの中。
手袋、本当はあるんですけど…そんなKYな女じゃありませんよ。
だって、だって…!
これは、ずーっと尚としたかったことだもん。
つい一ヶ月前、キスはしてくれなかったけど、照れながら繋いでくれた手。
これ、久々なんだよ!
そう思って、尚の顔を可愛く見上げた。
自然と視線が合い、尚はマフラーに埋めてた唇をチラリと見せてこう言った。
「…俺んち、来る?」
「え!?」
びっくりして目を見開くと、尚は吹き出すように笑った。
「なに、この反応…っ」
笑いを堪えてるのか、目を細めてマフラーを元の位置に戻す。
「う、うるちゃい!」
「噛んでるよ?」
こんな風にからかわれることなんて、ないと思ってたけど、あの事故あとから雰囲気も全く違う尚。
「こんな女、初めて」
「え?なに?」
「なんでもねーよ!」
最近は慣れたけど…一体なんで?
そうだ!
大切なことを忘れてた!
「なんで、今までと…その……変わっちゃったか教えてよ。」
「俺んちでね。」
そう言う尚は、すごく上機嫌。
何が嬉しいのか、ずっとニコニコしてる。
あのクッキー事件でも思ったけど…尚ってけっこう単純かも。
「はい、ここね。」
ニコッと、尚が笑ってあたしの腕を引っ張った。
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