嬉しくなって、尚にぎゅっと抱きついた。
初めて自分から。
目が合うと、ニコッと笑ってくれる可愛い尚も好きだったけど、こんな尚もたまにくらいならいいかな。
…たまにくらい、ね。
そう思っても、あたしに今笑いかけてくれる尚を見ると、自然と笑顔になれた。
「あーあ。聞きたいこと、いっぱいできちゃったな。」
「…やだ。」
「は?!なにそれ!」
「カッコ悪いからヤダ。」
「カッコ悪くても、尚は尚だから」
「え…」
「尚は尚なんだから、好きな気持ちはかわんないよ。」
冬空の下、頬を染めた男女が二人。
やっぱり、あたしにはハッピーエンドのヒロインしか似合わないな。
なんて今だから笑い飛ばせたり。
「諦めなよ、しつこいと嫌われるぞ?」
「やだ。尚はあたしのなんだから。」
巻き髪の彼女と、どうやらいくつかの顔を持つチャラい男がそんなことを話していることなんて知らない。
「いやだわー。嫌われんぞ?」
「もう、いまさら。」
尚となら、なんでも乗り越えられる。
そんな気がしてた。
_

