「…そろそろさ、呼び捨てにしない?」


頬を赤く染めながら言う彼は、本当に可愛い。



あの日、手を握り合ってからほんの少しだけ、尚くんとの距離が縮まった気がする。


「うん。」

「じゃあ…みつ、き。そろそろ予鈴鳴るからクラス戻るね。」


照れ臭そうに「みつき」なんて呼ぶもんだから、あたしも「尚、またね。」って、さっそく呼び捨てにしてしまいました。




甘い、甘い。

彼との距離は縮まるばかり。

これなら、キスだって遠くはない。





――……………

  ――…


「はぁ〜…こんなに幸せでいいのか?」

「なにそれ。幸せボケ?」

「うん。」

「嫌みか!幸せわけろ!」



親友、新木 香奈(アラキカナ)

お得意のトゲあるツッコミ炸裂です。



「あたしね、ホント尚好き。」

「いきなり何いうかと思えば、惚気かよ!ほか当たれ、ほか!」


「でもさ、キスはしたいよ。キス。香奈は彼氏とキスしたよね。」


「聞いてる?!あたしの話!え?キスは、そりゃしたでしょ。」


香奈は面白いと思う。

一人でも話してそう。

ツッコミは鋭く入れて、時にはボケてノリツッコミ。
お母さんの実家が大阪だとか。


香奈は明るくて楽しいし、話してて飽きない。


それに比べてあたしは、馬鹿でどんくさいし、特技っていったら妄想しかない。



尚は、あたしがこんなんだからキスしてくれないのかなぁ?


やっぱり不安だよ、尚…。


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