尚もこちらを見ていたようで、すぐに目を逸らされた。


たしかに、目が合ったはずなのに。


なんで…?



胸がズキンとした。



あんなにニコニコしていた尚の笑顔は、もうそこにはなかった。



「…なんで?」




このとき、あたしは尚がどんな気持ちであたしを見ていたのかわからなかった。



あたしの世界はこの時から、もうぼやけていた。



「みつ…き?」



心配そうな香奈の声が聞こえたけど、あたしは顔を上げることができなかった。



涙が溢れてきて、あたしの頬をお構いなしに濡らしていく。



こんなに泣き虫になっちゃったのは、いつから?

あたしって、こんなに弱虫だったけ?



恋は人を強くすると言うけれど、あたしは弱くなってくばかりだ…。



「もうヤダ…」



自ら殻に籠もってしまうことが、自分の首を絞めることになるなんてわからなかった。



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