「ハイ、睫毛取れたよ。」

「え?」

「睫毛、長いね。俺の二倍くらいない?」



睫毛?


あぁ!睫毛取ってくれたのか。


…って、ベタすぎないかコレ?!



睫毛長いのは生まれつきで、唯一自慢できることだったりして…


って、別にいいんだよ睫毛なんか!!


なんで気付かないの?!
彼は!!!



あれは、「睫毛取って」ってことじゃなくて、「キスして」っていう、あたしなりの必死なサインだったんですけど?!



「どうしたの?ほら、帰ろ?」



え……


何気ない一つの動作。

自然と、繋がれた手と手。

あんなに触れたかった、尚くんの手。


手袋の上からだったけど、たしかに繋がれた手。



「…帰ろっか。」


そう言った尚くんの頬は、たしかに赤く染まっていた。


「…うん!」




付き合って3ヶ月。

キスはまだ、手をやっと握ってもらった。


だけど、確かなことは尚くんも尚くんなりにあたしを想ってくれているみたいだった。



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