「…え?なに?」


「いや…だって、蜜希がさ」


「あたし?」



よくわからなくて、ちょうど首を傾げていたときだった。



ダン!


と勢いよく教室のドアが開いた。


ルーズな襟足に、黄色に近いくらいの茶髪の男。



「みーつチャン☆」



でた。


史上最強にチャラい男。

斎藤…なんだっけな。



「…なに。」


「うは!クールだねぇ!」



語尾をだらしなく伸ばす、この独特な口調。


正直、耳障りでウザったい。


やめましょう、と言いたくなる。



「うっわ。出た。蜜希から離れなさいよっ!」


「君カワイイよね。」


「は?!やだ!ウザイ!」



この男、軽い。


香奈が言っていた噂は満更でもないらしい。


やだなぁ。


この人、本気で近づきたくないかも。



「香奈、行こう?」


あたしがそう言うと、チャラ男はまたもや調子にのった。



「香奈ちゃんって言うの?!カワイイッ」


「呼ばないでよ!」


「香奈ぴょん、俺もご一緒してもよろしい?」


「なにそのあだ名!キモイ!ハズい!あっち行け!」




そんな二人の会話を余所に、あたしは廊下からこちらを見ている尚に気がついた。



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