初めて頬を叩かれた痛み。
びっくりしたけど、あまり現実味がなかった。
――そういえば、最近初めてなことばっかりだなぁ―なんて自分でも驚くほど冷静だった。
「早く尚と別れろよ!」
「尚は別れたがってんだからさぁ!」
そう言って、一人ずつあたしにビンタしていった。
「お前みたいなブスには、尚は合わないよー」
「早く現実見たら?尚が可哀想ぉ!」
“現実”って言葉に、ようやく、今自分が言われてることがわかった。
なんだろう…
すごくムカつく。
「…あのさ」
「は?なに?」
「聞こえなーいっ!」
そういえばそうだ。
なんであたしがこの人達に見下されなきゃならないんだ。
我慢なんてはじめからしてなかったけど、あたしはそんなに大人しくしてらんない…っ!
「さっきから聞いてれば…っ」
「うるっせぇよ。」
堪忍袋が切れたと思った。
勢い余って目の前にいた女の子の胸ぐらを掴むとこだった。
なのに、上から声がした。
「さっきから何?“尚”って馴れ馴れしくない?」
「え…」
「…あ」
みるみるうちに、女の子たちは顔色が悪くなっていく。
顔を見合わせて、眉をハの字に垂らしている。
「俺、お前らに呼んでいいとか言ってないんだけど。」
上から、大好きな尚の声がした。
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