「か…香奈?」


口をぱくぱくさせながら、チャラ男もとい斎藤裕史を指さして何かを言おうとしている。



「あた、あたし知ってるっ」


「うん…?」



香奈の驚きがいまいちわからない。

なぜそんな焦るのだ。



「まじ?俺、有名人とかー?!」


勝手にテンションを上げて喜びだすチャラ男。


あなた、真っ青になって指さされてるんですよ?


冷めた目で見てると、なぜか興奮している香奈に両肩をがっちりと掴まれた。



「こいつっ!こないだ、春佳が言ってたんだよ!“一緒にいるだけで妊娠する”って!」


「ええ?!一緒にいるだけで?!」


慌ててチャラ男と距離をとる。


「いやいや。一緒にいるだけとか、さすがに無理だからさ。」


半笑いで汗を浮かべる。


そんな斎藤裕史を見て思い出す。


そういえば、休み時間

この人派手なメイクの女の子とイケないことしてた。



「来ないでいただけます?」

「うわ!キツっ!蜜ちゃん、ひどくねー?」



こんな人と関わるなんて絶対いやだ。



尚がこんなのに似てるかも、なんて思ってしまったけど、まさかそんなことないよね。


尚が、こんな奴みたいにならないよね?





「あ…」



床に落ちたポッキーが無残に粉々になったのを見て、余計悲しくなった。
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