「いらっしゃいませーぇっ!ご主人様ぁっ!」


ピンクの甘い声。


黒と白のふりふりの短いふわっとしたスカートに、童顔を際だたせるツインテール。



ここはメイドだらけの喫茶店。通常メイド喫茶。


ただいま絶賛バイト中。

「蜜希ちゃん、恥ずかしがらないでちゃんとご主人様の顔を見て。」


注文を取り終わって厨房に入ったら、店長に眉をひそめられた。


そんなことを言われても恥ずかしいものは恥ずかしい。


(尚にも言ったことないのに…っ)



ぎゅっと目をつむると目尻に涙が浮かび、頭の中では佳菜に鋭いツッコミを入れられている。



「みっつんー!萌えかふぇおれ(はーと)まだぁ?」


The 秋葉原代表みたいな人が待っていた。


「い、今行きますぅー。」


「こら、"ご主人様"をつける!」


ギラ!と光った店長の目から逃げるように、客、いやご主人様に駆け寄る。



「ただいまお待ちしましたぁ。」


カフェオレをテーブルの上に置いて戻ろうとするとご主人様がこんなことを言う。


「あれ?呪文は?これじゃただのカフェオレだよ?」


口を"ホ"にして頬に人差し指を当て、首を傾げるご主人様。

お世辞にもかわいいとは言えない。


「あ、失礼しました。"萌えっ萌えっん〜っ!"はい、ご主人様もご一緒にっ!」


「「萌えっ萌えっん〜っ!」」


「マジみっつんかわゆすぅうぅう!」


恥ずかしくて爆破してしまいそうな呪文とその振り付けをすると、ぎゅーっとご主人様に抱きつかれた。


ふぅと耳に息を吹きかけられる。


(ギャー!!!)


鳥肌がピークに達したとき、


「失礼します。当店はこのような行為は禁止させております。」



くりっとした目が怒ってる。


でも、こうなったのは元はといえば
可愛い彼、神崎くんのせいなのだ。

_