耳元で低く甘い声。



驚いて後ろを振り返ると、ミルクティー色の髪のあたしのよく知っている人。



「こういうの、興味あったんだ?」



耳元に黒のピアスを光らせて、目を細めて意地悪く笑う尚。



「ちっ違うから!」



なるべく声を抑えて否定する。


さっきのことよりも、あたしは今のことに驚いていて、尚への怒りとか悲しみとかを忘れている。


「どうだか。なら、なんで早く行かなかったわけ?」


「へっ?!」



頬にチュッとキスされる。


反射的に染まる頬。

尚の唇が触れた頬を手で抑え、ばっと距離を離す。


「や、やめてっつの!」

「あ…もしかして、ここで俺を待ってた…とか?」


そう言って、ポンと優しく頭を撫でられる。



「あ…」


頬は染まり、眉は垂れ、なにもできなくなり、ただ尚を見つめるしかなできなくなった。




「可愛いーな、ホント」

そう言われて、『尚じゃない!』って思ったのに。



顔が近づいてきて、



「…好きだよ」


「えっ」



その言葉に抵抗できずに、キスされてしまった。

不可抗力だ。


ずるい。

あの顔であの声で、あんなこと言われたら、なにもできない。



こんなのになっちゃったけど、尚は尚なんだ。


あたしが、尚をぶっ飛ばせるわけない。



「蜜希、好きだから」


「…ん。」


悔しいけど、

こんなやつになっても

あたしは尚が好き。




「あ。」


「へ?」



尚が突然声を出したからあたしも驚き顔を上げた。


尚は、あたしの後ろを見てる。

目線は上だ。



「え?え?」


頭になにかついてる?!

なんて思いながら、頭をいじっていると、ふと声が後ろからした。



「あ」


振り返ってあたしも


「…え」


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