なんだか震えるような声で言うから、なんでこの人はこんなに可愛いんだろうって胸の奥が震えた。
すがりつくようにあたしを抱きしめるから。
行かないでっていうように強く抱きしめるから。
胸の奥がきゅんてする。
ずっと抱きしめ合っていたら、尚の鼓動とあたしの鼓動のリズムがひとつになったみたいになった。
「それで、一生懸命あたしが好きな"可愛い人"になろうとしたの?」
ぽんぽんと優しく頭を撫でてみた。
小さな子供を慰めてるような気分。
ふふっと笑って和んでしまう。
そんなあたしが気に食わなかったのか、尚はだんだんムスっとしだした。
そして、急に体を離したかと思ったら、ガッと片手で頬を捕まれた。
「ちょっ、ちょっ、っ!!」
たらこ唇になっているであろう恥ずかしい姿を彼氏の前に晒していると思うと屈辱で、懸命に抵抗する。
「なに?最近俺をいじめて楽しんでたよな?ん?」
笑顔はとても可愛い。
でもどこか黒くて若干怖い。
「うっ!ご、ごめんにゃしゃっ」
「ほら、早くさっきみたいにぽんぽんしてみろよ。」
「ふぇっ!」
相当気に入らなかったらしい。
人前であんな質問したことや、頭をぽんぽんしたことも全部!
だからって、こんな羽交い締めにされる覚えはないっ!絶対!
「ご、ごめんてっ」
「許さない。」
なんだか楽しそうに見えるのは気のせい?
彼の瞳の奥に緩い二つのカーブが見えるのは気のせい?
(S…っ!!)
「ゆ、ゆるしてくだしゃいっ」
「んじゃ、俺の言うこと聞く?」
「う、うん…へっ?!」
ぱっと解放されて一瞬ほっとしたのも束の間、視界は反転していた。
押し倒されてると気がついたのは、尚の影が近づいてきたときだった。
「ンっ?!」
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