焦りと戸惑いを隠せない様子の彼は、珍しく目を泳がせて「えっと、えっと…」と慌てている。
それが演技じゃないというのはわかっていて、本気で焦っている尚を見ると自然と笑みがこぼれる。
つい何日か前まではM街道まっしぐらな自分だったが、急遽路線は外れて逆方向へ。
これがいいのか悪いのかはわからないけど、好きな人を困らせることに楽しさを感じてしまった。
あたしは、尚と違って人前でラブラブするのは苦手じゃなく、むしろそゆのをしてみたかったくらいで、今まで振り回された分、今回はあたしの要望をとことん聞いてもらうんだから。
乙女の暴走は誰にも止まらない。
「最近、全然してくれないじゃん…」
眉を下げてしゅんとしてみる。
ちらりと目だけで尚の表情を盗み見ると、少し驚いているようで、そして困ったように眉を下げている。
「ご、ごめん…」
いいぞ、いいぞ…
早く本性出してみなさいよ!
目的がいつの間にか変わっていることに自分でも気づかず、この状況を楽しんでいた。
「じゃあ…あたしのこと、好き?」
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