「…誰。」


あ、知らない人に警戒してるのか。


「転校生の神崎くん。本借りたいから、図書室までの案内と、本の借り方を教えるんだけど…」


「それが仕事?」



冷たく鋭い視線を放つ尚。


それを見てから、ちょっとまずかったかな、と今頃気づく馬鹿な自分。


普通、嫌だよね。


あたしが逆だったら、嫌だし…。



慌てて謝ろうとすると、尚はそれを遮るようにニコッと笑って「俺のことは気にしないで大丈夫だよ。」と言って帰ってしまった。


あれだけ不機嫌な顔してなかなか帰ろうとしなかったのに、なぜこんなにあっさりと頷いたんだ?


不思議に思いながらも、神崎くんに図書室を案内した。



「彼氏さん?」


「あ、うん。」


「…」

「…」



せっかく神崎くんが話を振ってくれたのに、見事に話をブチってしまった。


未だに尚の行動に納得のいかないあたしは、神崎くんと仲良くなる絶好のチャンスを逃したのだった。



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