それなのに、本気で抵抗しないのは惚れた弱みで。


いろいろあったけど、尚はあたしを大切にしてくれてるってわかるから、
この手だけは絶対に離したくないって思えるから、

こんなふうにじゃれ合いができる時間が酷く愛おしい。



一瞬、頭をよぎるのはあの人。


尚の幼なじみで、あたしと同じ、尚を好きな人。


「ん?」



静かになったあたしを不思議そうに見る尚。


とっくに解放された体は、なんだか怠くて動けない。


尚の視線を感じながら、あたしはぼーっとしていた。



「なんだよ?なに考えてんだよー。」


「ひぇっ…!?」


相手にされなくなった尚は、急に不機嫌になり、あたしの頬を掴んでひっぱった。


「い、いひゃいっ!」


「うるせぇ!お前が急に静かになるからだろ!俺をシカトしやがって!」

「しひひひかとなんてひょんなっ!」


ぷにょぷにょな頬はいくらでも伸びるみたいで、なんだか恥ずかしくなる。


また顔に肉がついたのかも…っ!


童顔。幼児体型。


人並みなのは身長と握力くらいで、得意なものはすぐには浮かばないくらいないに等しい。



でも、彼氏は最上級の極上彼氏。


ひねくれた性格と性癖を除いて。


そんな彼があたしはだいすき。



それはずっと変わらない。

ずっと彼の隣で笑っていたいんだ。



そのときは、そう思えたんだ。


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