「なにか言いたそうな顔してる。言えよ。」


「え…」



コツンとおでこをくっつけられ、近すぎる距離に心臓の鼓動が速くなる。

尚の甘い香りにクラクラする。



「言えよ。」


「あ、あの…尚が優等生をしていたのって、やっぱり家庭の事情が関係するのかなぁって…」


「は…」


「あ、ごめん!いま言うようなことじゃないよね。ごめん。」



尚の眉がひそめられたのを見た瞬間、しまったと思った。


やっぱり聞くタイミングじゃなかった。


そう思って下を向いていると、尚の間の抜けたような声が聞こえた。



「は?ちげーけど。」


「え?え…」


「つか前にも言ったし。」


「んじゃなんで…」


「だーかーら!…〜っ!言わねえ!」



なぜか真っ赤になる尚。


"お前が可愛いのが好きっていうから"



その言葉を思い出して、あたしも熱くなる。



「あ、ごめん…」



顔がすごく熱い。


(あたし、いま、絶対顔赤い…っ)



チラリと視線を上げると、尚と目が合う。



「みつき…」


「え…」



急に真剣な顔をして、あたしの名前を呼ぶ。



「ちょ…んっ」


熱くなった頬を大きな手に包まれ、ゆっくりと唇が重なった。


優しすぎる感触にクラクラする。


しっとりと重なった唇の間から侵入しようとする尚。



「ふ…っ」


「…開けろよ。」


くいっと顎を上げられ、あっさりと侵入してくる。


甘い痺れに、あたしはほとんど意識が薄れた状態だ。


苦しさで生理的に流れる涙。


口の中に親指を無理やり加えさせられ、口を閉じることもそれを拒絶することもできない。



「なっ…なホっ」


「喋れてねーじゃん。」


苦しそうにそれを受け止めるあたしの姿を、さも愛おしそうに見つめる。


(この男の性癖って…っ)


前から思ってたけど、この男…



「可愛い。」



このサディスト…!



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