なにを疑っていたんだ、自分。



尚が怒った理由がわかった。


見せたくなかった理由もわかった。



全部、全部丸く収まったのだ。



「いや、収まってないじゃん。」



朝のHRが終わると、さっそく香奈の毒舌が炸裂。


昨日の出来事を話したあたしに、香奈は呆れ顔。


「なに?その心霊写真は、ちゃんと供養してもらったわけ?」



「うん。近くのお寺で。」



尚と仲直りできたあたしはニコニコの笑顔。


幸せすぎて、正直浮かれ気味。


そんなあたしに、香奈はため息。




「もっとドロドロした話かと思えば、心霊写真ってどーよ?なに?笑い取りたいの?」


「どっかの昼ドラより、あたしはコミカルな方が好きだし。全部解決したのだー!」


「なにが“したのだー!”っよ!解決してないのが一つだけあるでしょーが!斎藤裕史はどうしたのよ!」


「あ…すっかり、幸せすぎて忘れてた…」


「こンの抜け策!!」


「ぬ、ヌケサク…?」


「ま、でも尚くんが黙ってないかー。不良のオヤビンだしね」


「え?今なんて…」



ガシャーン!!!



廊下から大きな音が響いた。


それは、ガラスが割れるような音。



「キャー」だの「ワー!」だの野次馬の声。



「蜜希、行くよ。」



香奈の手に引っ張られ、廊下に行けば人だかり。



「ふざっけんな!テメェーなにしたかわかってんのかよ!?」



荒々しいハスキーな声に、あたしの体はビクっとする。



急いで人だかりをかき分けていけば、そこにはボロボロの体の斎藤。


壁に横たわる斎藤の襟元を掴み、ひとつの乱れもない尚の姿。



「答えろよ!カス!!!」


ガシャン!!


尚の振り上げた拳が窓ガラスに当たり、ガラスが割れる。



見慣れない尚のこんな姿に、あたしは体が震える。



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