「どうして…?」



大好きな尚なのに、いつもと違うよ。



「尚、話聞いて…お願い。」


あたしを見下ろす尚の瞳は冷たくて、感情が読み取れないような無表情。

だけど、しばらくすると瞳の色は少し変わり、



「言い訳とかなら聞かないからな。」



と口をとがらせた。


拗ねたような尚がかわいくて、あたしはフッと笑う。



今なら言える。




だけど、信じてくれるかな。


こんなあたしを、もう一度抱きしめてくれるかな。



「あたし…っ斉藤と…キスしちゃった…」


「…」


「屋上で、一人でお昼食べてて…そこで斉藤がきて…話してたらいきなり……」


「…」


「んで、写メられて…尚に見られたくなくて、斉藤のいうこと聞くしかなくて…あっ!」


「ごめん…俺のせいで…」



ぎゅっと尚に抱きしめられ、安堵の涙が流れる。


嫌われたかと思った。


あたしが悪いのに、尚は謝ってくれた…


それだけで十分だよ。



あの写真は、尚の大事なものかもしれない。


一番じゃなくったっていい。


今、尚があたしを抱きしめてくれるなら、二番目でも構わない。



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