「もう!っ…あっち行ってよ…」


「それは無理だって。」

「なんでよ!ほっといてよ!」



泣き顔を隠すあたしを知った上でわざとなのか、斉藤は急にしゃがんで頭を撫でてきた。


顔を隠しながらちらりとその顔を見れば、にこにこしていてムカついた。

だって、なんだか小さい子をあやしているみたいな顔してるから。



「蜜チャンは可愛いな。」

「はぁ?」



なんだか、犬や猫に可愛いというような口調。


もしかして、小さい子をあやしているより、動物を撫でてるって感覚なの?!


そう思うと、よけいに腹が立った。


だけど、その瞬間ふわっと甘い香りがしたかと思えば、あたしは斉藤の腕の中だった。



「ほっとけないよ、蜜チャンのこと。」


「な、なにして…っ」


「…抱きしめてんでしょ。」


「それは…っわかる…っ」



抵抗しても、斉藤の腕の力が強くなるだけ。


尚より広い胸板に、正直斉藤を男として意識してしまった。


いつもおちゃらけてたから忘れてたけど、この人あまりいい噂ないんだった!


そういえば、初めて斉藤に会ったとき…この人何してたっけ!?


派手なお姉さんと、ウハウハしてた…記憶があるんだけど!!



「やめて!!やめて!!あたしこの通り色気ないじゃん!あんたも、言ってたじゃん!」



抵抗を激しくしてみるけど、びくともしない。


そして、気がつけば斉藤の手の平がお尻に触れた。




「ヤ?!ちょっと!!ホント無理無理無理ー!」


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