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「立花くん…。今日、日直だよね?」


「…あ〜そうだね。忘れてたわ」


同じクラスの子は、普段仕事をきちんとこなすはずの尚が、日直の仕事を忘れてたという事実に驚きを隠せずに口を開きっぱなしだ。



「た…立花くん、具合でも悪いの?」


「ん?…ぜーんぜん」


笑顔で答える尚には、今から日直の仕事をやるようには到底考えられない。


(この人…やる気ない!!!)







「立花くんって、あーゆーキャラだっけ?」


「えー。もっとさぁ…ふわ〜とした雰囲気の優等生……だったよね?」



今日耳にするのは、こういった尚の話題ばかり。



一年の時から、尚はみんなから人気があった。


尚に微妙な違和感を抱くクラスメートたち。

だけど、尚の人気は落ちるどころか、「ギャップがあっていい!」とか「こっちのがタイプ」なんて、なぜかこのグレちゃったようなおちゃらけ尚の評判はいい。




しっかりとしめていた第一ボタンは、今や意味を無くし、第二ボタンまで開けられている。


きちんと上までしめていたネクタイは、緩く第三ボタン辺りで揺れている。


すれ違っただけでもわかる甘い香り。


香水なんか付けてなかったのに。




ふわ〜っとした尚独特の優しい雰囲気が一気に崩れ落ちた。





「じゃあ、立花くん、あたしが日誌書いとくね」
「ん。さんきゅー。優しーね」

「えー。そんなことないよー」


優しくて、笑顔が可愛い尚は、優等生からチャラチャラしたただの不良男子になってしまった。



「きゃー!まさに肉食系って感じー!」


あんなの尚じゃない。


「あれホントに立花くん?!」


違う。


「まじ惚れるー!」



あんな尚、やだ。



「「かっこいいっ」」



……なんて思うのは、あたしだけみたいだ。

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