「おはよ、尚」

「…おはよ」



今日も大好きな尚と、朝から待ち合わせ。


いつもいつも、尚は待ち合わせの5分前に来てて、早いときなんかは、あたしの家に迎えに来てくれる。


時間厳守の尚。

マフラー巻いて、手袋して寒いときでも必ず早めに来てくれる。




そんな尚だったのに…



「今、何時?」

「え、30分」


現在8時30分。

待ち合わせは、いつもと同じの7時50分。

いつもの尚とは大違い。

40分の遅刻。

というより、学校に遅刻。


黒のマフラーに軽く顔を埋め、手袋をしていないのか手はポケットの中。


そして、一番気になったのが、耳元に光る黒のピアス。


尚は、耳に穴なんか開けてなかったのに…。



そして、どこか強気な瞳は尚とは思えないくらい色っぽい。



「…遅刻か。蜜希、かなり待たせたよな。わりぃ。」


口だって悪くなった。


やっぱり尚は変わっちゃったんだ。

昨日、あたしなんかのために一緒に落ちたから。

きっと、変なとこ打っちゃったんだ。


だから尚は、尚は変わっちゃったんだ…。



「何ならこのままサボる?」なんて言う尚を見ると、自分を責めずにはいられなかった。



「尚、頭痛くない?」

「ん?ぜーんぜん。」


ニコッと笑う尚がチャラく見えてくる。



そんなはず…ないよね。



もう一度、愛しの尚の姿を瞳に映す。


目が合うと、ニコッと笑って、両手をポケットに突っ込んだまま前屈みになる尚。



「こんなに頬を赤くして…」


「ッ…?!」



寒さで冷たく赤くなったあたしの頬に、尚が唇を落とした。



嘘でしょ?!

嘘でしょぉお!!!




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