あたしが唇をあてた頬を、尚は押さえてこちらを見る。


滅多にみれない、尚の焦ったような顔。


そんな尚を見て、自分がしたことにはじめて羞恥心を抱く。



「あ…ち、ちがっ…」



火照る頬を隠しながら、あたふたするあたしに尚はいつもの余裕顔に戻る。


というより、意地悪な笑みを浮かべている。



「へぇー。積極的じゃん。」



そう言って、両肩に両腕を乗っけられ、あたしが逃げられない状態をつくる。


顔が近づき、思わず目を瞑ると額に柔らかな感触。



「…せっかく、家の前だから我慢してたのに…バーカ。」



少し照れたような表情。
きゅーっと胸が高鳴る。

視線が絡み合っていたとき、バタンと音がした。


「「「あ…」」」



音のした方から、見慣れた姿のオバサン、オジサン、メガネ。



「ちょ…っ」



尚が小さなことを上げた。


顔は真っ青。

額に嫌な汗をかいていると見える。


あたしは、顔は真っ赤。
震える拳。

こめかみに浮き出る血管。



「みーっちゃった!」



母、父、妹に拳を振り上げたい衝動にかられていた。



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