《短編》くすんだ鍵

まったく、コイツは一体何様なのだろう。


すっかりクリスマスを過ぎて、届いた想いは結局は、こんな形になってしまったけれど。


肌を触れ合わせ、互いの体をあたため合いながら、優心の熱を受け入れた。


床に転がっているのは、あたし達を繋ぐ、鈍色の鍵。


そのくすんだ輝きさえも愛しくて、だから手を伸ばそうとしたのに、容易くそれは捕えられてしまう。



「まだ他のこと考える余力があるわけだ?」


優心は熱っぽい瞳を細め、



「ホントお前はしょうがねぇ女だよ。」


それが愛の囁きに聞こえたあたしは、よっぽどの重症なのかもしれないけれど。


感じた重みの分だけ愛しさが込み上げてくる。


指先を絡めながら、やっと掴んだ大切なものを、今度はあたためていかなくちゃ。


揃いのくすんだ鍵を手に――













END


本作に出てきた優心は、今後公開予定の『渇望』という作品のスピンオフ、『渇望−gentle heart−』内に、超脇役として登場していますので、そちらもお楽しみに。

なお、本作とは一切関係しておりませんので、あしからず(笑)