《短編》くすんだ鍵

「ねぇ、頼むから真面目に答えてよ。」


「俺はいつだって大真面目ですけどね。」


「………」


「だってここまで俺のこと振り回して、いなくなったかと思ったらいきなり待ち伏せなんかして現れて、何か悔しいじゃん。」


優心は口を尖らせる。



「言っとくけどさぁ、俺は初めからずーっと、お前に好きだっつってたろ。」


「………」


「だから今更聞かれたってなぁ。
仕事でもないのにクサイこと言えねぇし、俺セックスしてる時じゃねぇとそういうこと言わない派だから。」


どういう派閥だ。


と、いう、突っ込みをするのも面倒になり、あたしは不貞腐れるように頬を膨らませた。



「俺のこと好きなんだろ?」


「………」


「なぁ、あっためてあげようか?」


少し酒に焼けたハスキーな声があたしの耳元をいたずらにくすぐる。


すぐにそこから熱を帯び始め、目を逸らしたら、また優心は楽しそうに笑った。


本当に、嫌になる男。



「ねぇ、そんなこと言うなら、あたしまた前みたいに毎日のようにここに来ちゃうよ?」


「良いよ、それ楽しみにしてる。」


優心はついばむようなキスを繰り返しながら、



「お前は俺じゃなきゃダメだって、いい加減わかったろ?」