言って、最後は笑って別れようと思っていたのに。


なのに次の瞬間には腕を引かれ、部屋の中に押し込められていた。


触れる唇から伝わる熱。



「ふざけんなよ、言い逃げようとか思ってんじゃねぇぞ。」


言葉とは裏腹に、彼は泣きそうな顔であたしを抱き締める。


いつだって優心は、こんな風にあたしの冷えた心ごとあたためてくれたよね。


ねぇ、また縋ってしまいそうになるじゃない。



「好きだよ、優心のこと。」


「………」


「だからあたし馬鹿だし、期待しちゃうじゃん。」


震えていたのはどちらの体だったのだろう。


だからなのか彼は抱き締める腕に一層の力を込め、煙草と香水、そしてアルコールの匂いを強く感じた。


でも、その胸の中で確かに聞こえる鼓動。


息を吐いた優心はあたしから体を離した瞬間、



「痛っ!」


バチン、と何故かデコピンを食らわしてきた。


突然のことにぎょっとしたあたしを見た彼は噴き出したように笑いを堪え、



「悪ぃ、夢かと思ったから。」


ついには大口を開けてしまう始末。


そこにはまるで緊張感なんてものはなく、あたしの純粋な告白さえも軽く流されたのか。



「だったら普通、自分の頬をつねったりするもんでしょ!」


「いや、んなことしたら俺の顔に傷がつくじゃねぇか。」


「あたしの顔に傷がつくのは良いのかよ!」