「……え?」


「頑張ったんだけど、もう俺らの心は完全にすれ違ってて、一緒にいても前みたく笑えなくなってた。」


「………」


「どうしても疑っちゃうし、信じきれなくて、相手を責めたり。
そういうことばっか繰り返してるうちに、疲れたから。」


だから別れを選択したのだと、ミツは言う。


あたしはただ何も言わず、顔を俯かせていた。



「俺、気付いたんだ。」


それでもミツは言葉を手繰り寄せる。



「琴音といてもずっと上の空で、考え続けてた。
自分にとって何が一番大切なのか、って。」


「………」


「今更になって言うなよ、って感じだけど、俺、あの日からずっとアンナのことばっか気にしてた。」


「………」


「初めは罪悪感もあったけど。
でも一緒に暮らし始めて、早く仕事終わらせて家に帰りたいって思うようになったのは、飯作って待っててくれるお前がいたからなんだ、って、気付いたからさ。」


涙が溢れるが、それとは対照的に、心は動かない。


それがあたしの今の答え。



「ごめん、ミツ。」


少し前なら飛び上がって喜んでいただろう。


やっと想いが届いたのだと舞い上がり、ミツに最高級の笑顔だって向けていたはずだ。


けど、でも、あれ以来、ずっとあたしの脳裏を占めていたのは別の人。



「あたし優心じゃなきゃもう無理だよ。」