亜子は寒さの中で鼻を真っ赤にし、まるで子供のようだと思ってしまう。


こんな時に脳裏をよぎるのは、決まってアイツの顔。


そんな自分には苦笑いが混じるけれど。



「さーて、みんな待ってるし、ここにいても風邪引くから、帰ろう?」


彼女はあたしの腕に絡まってくる。


あわわ、と思った時にはもう遅く、やっぱり強引に引っ張られた。



「ちょっと、慣れ慣れしくしないでよ!」


「うっわー、性格悪っ!」


「うるさいのよ、別にアンタを認めたわけじゃないんだからね!」


ぎゃーぎゃーと騒ぎながらの帰り道。


きっとあたし達は、こんなんでもそれなりに上手くやっていける気がするから。


あたしは息を吐き、足を止めた。



「実家に帰るって選択肢も悪くないのかもね。」


亜子は笑っていた。


月夜に照らされた女ふたり、顔を見合わせる。



「アンナっちもそうやって、たまには素直になると可愛いのにねぇ。」


「だーかーら、うるさいっての!」


「ほら、すぐそういうこと言う。」


そうこうしながら家に帰り、あたしは両親やお兄ちゃんに謝罪した。


みんなで囲んだ鍋はあたたかかった。


だから少しだけ、凍っていた心が溶けて、大切なことを見つめ直せたのだと思う。


その後、何故だか亜子とは一緒に遊ぶような仲にまでなってしまったけれど。