食べる?


なんて付け足したことが間違いだったのかもしれない。



「俺らまだ何も食べてなかったし、琴音の分も、良い?」


あたしの笑顔はきっと、引き攣っていたに違いない。


けれども断る理由を見つけるに至らず、仕方がなくも3人分のお皿を用意した。


テーブルに並べてからいつもの場所に腰を降ろすと、それが当然のようにミツの隣には彼女の姿。


あたしと向かい合わせの格好だ。



「アンナさん、それだけしか食べないんですか?」


「うん、明日の仕事には大きなスポンサーがついてるから、いつも以上にむくみとか気にしてなきゃダメだからね。」


アンタとあたしは違うのよ。



「そのわりにはお菓子とか好きなくせに。」


ミツが横から口を挟んで笑った。


いや、正確に言えば、彼女に向かって笑い掛けた。


そこにはあたしが付け入る隙なんてないような空気が出来上がっている。


ふたりだけだったはずの空間が汚されていくようで、そしてここがまるで別の場所のようで、だからまた、見えない位置で拳を作った。



「コンパニオンなんて今じゃなきゃ出来ないですもんね。」


どういう意味だろう。


わざとなのか天然なのか、嫌味のような台詞。


そりゃ、若いうちだけだし、将来性も何もなく、安定なんてしないのは事実だけど。


でも、どれだけ頭が良いのかは知らないが、大学生如きに馬鹿にされるような仕事じゃない。