「えっとねぇ、こっちが俺のカノジョの琴音。」


「はじめまして、琴音です。」


どうもはじめまして、あたしは毎日アンタのカレシと一緒に暮らしながら、パンツまで洗ってあげてる女です。


なんてことは言わないけれど。



「あたし、アンナ。」


「話に聞いて想像してたよりずっと綺麗で驚いちゃいました。」


ありがとう、と社交的な笑みを浮かべるあたしに対し、



「ミツはこんなに美人なイトコがいて羨ましいね。」


そう、ミツは対外的には、イトコとのルームシェアだと公言している。


だからただの仲の良い親戚であって、そこには心配の種なんかなのだ、と。


だから嘘だとバラしてやりたくて、あたしは小さく鼻で笑った。



「あたしの方こそ、話に聞いてたよりずっと可愛い琴音ちゃんを見て驚いたよ。」


「やだっ、そんなことないですよ!」


そりゃそうだよ、だって社交辞令なんだから。


確かに普通に可愛いとは思うけど、でもその辺の子と変わりないし、ぶりっこなだけの社会を知らないただの大学生。


どうしてミツは、こんな女を選んだのだろう。



「つか、寒いし中に入ろうよ。」


彼は室内に入るようにと促し、嫌になりながらもリビングへときびすを返した。


もちろん琴音ちゃんも後ろから続く。



「あ、もしかして今日ってカレー?」


「そうだよ、あたし明日仕事遅くなる予定だから、作り置いておこうと思って。」