ミツからは、今日もデートだと連絡が入った。


今頃、この部屋じゃない場所で、あたしじゃない女に笑い掛けながら過ごしているのだろうことを想像すると、苦しくなるばかり。


仕事も友人関係も順調なのに、なのに何ひとつ満たされた気になんてならないよ。


ミツの幸せなんて、あたしは願ってあげられない。



「あぁ、もう腹立ってくる!」


優心の部屋に行こうかとも思ったけど、でもアイツはきっと今、仕事中だ。


だから結局、ここで悶々とした気持ちを抱えていることしか出来ない。


作り終えたカレーを鍋の中で掻き混ぜていると、



「ただいまー!」


玄関からミツの声が聞こえて心臓が飛び跳ねた。


だってまさか、こんなに早く帰ってくるなんて思ってもみなかったから。


だから急いで出迎えに行った瞬間、



「ごめん、お客さん連れてきちゃった。」


彼の隣には、女がいた。


彼女はペコリと礼儀正しく頭を下げ、



「お邪魔しちゃってごめんなさい。」


可愛くて、ふわふわしてて、ちっちゃくて、おまけに優しそう。


ミツのカノジョ――琴音ちゃん。



「どうしても俺の暮らす部屋が見たいって言うし、アンナ怒らないでよ。」


「うん、別に良いよ。」


あたしは今、上手く笑えているだろうか。


はっきり言って、こんな女にはあたし達の聖域であるこの部屋に足を踏み入れてほしくはないけれど、でも怒鳴り散らせるほど向こう見ずにはなれなかったから。