お父さんは、最後の最後まで何も言わなかった。 ―……カチャ… 玄関のドアを開けて、外に出た。 まだ季節は7月。 蒸し蒸しとした空気が、あたしを包む。 外に出ると、前きた時みたいに黒のセダンが家の前に停まっていた。 「由美、大丈夫?」 ママは優しく聞いてくる。 馴れ馴れしくしないで欲しい。今更。 あたしは一瞬答えるコトを躊躇したが、 「……別に。」