当然……1番最初に歌うのはわしでなければいけなかった。



そんな下っ端の礼儀も、おやっさん睨まれた瞬間どこかに飛んでいってしまっとった。



頭の中が真っ白のままオドオドしてると、原田の兄貴が『やしきたかじん』で先頭をきってくれた。



そのあと順番に、本部長や代貸も聞いた事もないような演歌を熱唱。



その時わしは尋常やないほどの危機を感じ取った。



(ちょい待て………この状況ってまさか演歌しかあかんやん………俺演歌なんか全く知らんてよ………えーーー!?ちょっと待って下さいよ!!!泣)



そして歌い終わった代貸が満足感たっぷりの顔でわしに言った。



「次、平尾歌えよ。」



「は……はい!!!!」



おやっさんを見るとやっぱりわしを見て睨んでいる。

さっきの件を、よほど根に持っているようや。

わしは必死に本をめくり、記憶にある演歌を探した。

とにかく何でもいいから探した。