わしに気付いた原田さんは、SOSを目で訴える。



「姐さん!!平尾来よりましたで!!」



「おー平尾お疲れさん♪疲れたやろ〜。ご飯食べたんか?」



「いや、まだですけど!!」



「若いから食べやんでも死なへんわ。ほな行こか。今パパ家でテレビ見てはるから車で待機しとくで。原田早よしぃ!!行くで!!!」



姐さんの軽い冗談にさえ反応する間もなく、わしは2人の後ろをついて行った。

ナンセンスなスパンコールのセーターを着た姐さんを先頭に、3人は事務所を出て原田さんが借りてきたレンタカーへと乗り込んだ。

そして車を本宅のすぐ脇に停め、組長さんが出てくるのを息をこらしてジッと待つ。



「・・・・・・・・・・」



そんな静まり返った中、緊張をほぐすかのようにわしの腹の虫が鳴った。



グルルルル……



「……平尾お腹減ってるんか?笑」



「い……いや大丈夫っす。(さっき飯食うてへん言うたがな……。)」



「これ食べとき。」



そう言って姐さんは、パンパンに膨れ上がった小さな赤いキンチャク袋を開け、中からクリームパンを取り出した。



「姐さんそのカバン、クリームパンだけでいっぱいになってますやん(笑)」



「原田は黙っとけ!!うちはお腹空いた時用にいつもカバンに食べるもん入れてるんや!!!なぁ〜平尾、遠慮せんと食べ♪」



「あーはい、す…すんません。」



(刑事やないんやから……。)



甘ったるいクリームパンはわしには少々キツかったが、それでも空腹は和らいだ。