自転車に乗って学校へ向かう朝の通学路。

目の前では踏切の遮断機が立ちふさがり、快適に走っていた自転車はブレーキで悲鳴をあげた。

警告音が鳴り響く中、ふと辺りを見渡す。

と、あるマンションの一室に目がいった。

ベランダでいそいそと洗濯物を干す1人の女性。

僕にはその女性が愛らしく可憐に見えた。




あんな人と付き合えたら……




そう思うと同時に、女性の背後から腕が伸びる。

女性を抱きとめたその腕の持ち主は、優しい雰囲気の男性で。



所詮、叶わぬ恋……か。




2人の関係を悟り、小さくため息をつく。

けれど、腕の中にいる女性の幸せそうな微笑みを見たら、ショックよりも温かい気持ちが胸いっぱいに広がって……




なんか、ちょっと嬉しいかも。




そんな気持ちを抱きながら、鳴き疲れた遮断機を潜り抜けた。