床に触れる足が冷たい。その冷たさすら心地良いと感じる私は、感覚がおかしくなってしまったのかもしれない。しかしそれも長くは続かなかった。同じ場所でじっと動かずにいたせいか、徐々にむき出しの足が寒くなってきた。おまけに冷たい空気がブラウスをすり抜けて肌を刺すものだから、セーターが恋しくて堪らない。
踊り場はただ沈黙に包まれていた。眞鍋君は相変わらずだんまりを通していて、私もそんな眞鍋君に何を言えばいいのかわからなかった。また、何を言っても届かないだろうとも思っていた。無反応な眞鍋君はちょっと前までの眞鍋君とは違った怖さがある。怖さを通り越して奇妙だ。唇の熱はもうとっくに冷めていて、眞鍋君はこんなだし、行為に関しては、もういいかなと半ば諦めが入っていた。ノーカウント。なかった事にしようじゃないか。
改めて、この状況をどうしたものかと考え倦ねる。打開策はないものか。ちらっと眞鍋君を盗み見る。いっそのこと眞鍋君を放置して帰ってしまおうか。きっと、私がひとり此処から退散しても気が付かない。
なんて、善からぬ考えが頭を過ぎった時だった。階段を駆け上る足音が耳に届いたのは。
誰だ? と思った時には既にその人は私達の前に姿を現わしていた。
「桐原君!?」
走って来たのだろうか。息を切らせた桐原君は険しい顔をして眞鍋君の背を睨んでいた。

