桐原君だって、もっと純粋で優しくて、おまけにすごくすごく温かい目で私を見てくれるんだ。ちょっとした事で心配してくれるし、私が笑うと一緒に笑ってくれて、元気がないとあの青空みたいな笑顔で元気をくれる。
そういう温かさが、眞鍋君には一切感じられなかった。
「眞鍋君は、あたしのことなんて好きじゃないよ。好きじゃない」
真っ直ぐに眞鍋君を見た。瞳の奥にある真意を探るかのように。
「なんで?」
私が断定的な事を言っても、眞鍋君は特に取り乱したりはせず、落ち着いた様子で興味深そうに私の言葉を聞いていた。
「わかんないけど、あたしが好きでこうしてる訳じゃないんでしょ?」
そう思いたかったのかもしれない。眞鍋君は自分が想いを寄せる子に一方的に気持ちを押し付けるようなひとじゃないと。
豹変した眞鍋君を目の当たりにしても、これが眞鍋君の本意によるものだとは、私にはどうしても思えなかった。
「へえ。俺が小春ちゃんを好きじゃないって、そう思うんだ?」
眞鍋君を見つめたまま、慎重に首を振って肯定する。
「そっか。でもね、小春ちゃん。残念ながら関係ないんだよ」
それは、眞鍋君が私を好きであってもそうでなくても“関係ない”という意味だろうか。では、何をするにあたって“関係ない”のか。その疑問は次の眞鍋君の一言で明らかになった。
「俺と付き合って」
「なっ……!」
絶句した。
信じられない。気持ちがないのに付き合えるという事が。尚且つ私にそれを悟られたうえで付き合ってと言える眞鍋君の神経が。
「ね?」
ね? じゃないよ眞鍋君。
「お互い、好きでもないのに付き合うのはどうかと思うのですが」
それでも意志を変えようとしない私に、眞鍋君はため息を吐いて「頑固だね」と苦笑した。
いや、頑固じゃないし。普通に断るでしょう!

